2016.10.05
「室礼」と書いて「しつらい」と読みます。
お部屋に飾り付けをする事を、「部屋をしつらえる(設える)」と言いますが、それですね。
お正月、節分、桃の節句、端午の節句、七夕、お盆、お食い初め、七五三、還暦など、日本にはたくさんの年中行事や人生の節目の儀式があります。そういった季節や人生の節目に、感謝を込めてお部屋をしつらえる事を室礼といいます。
我が家でも、お越しくださる方々に季節を感じて頂こうと、毎月お玄関を設えているのですが、室礼と言ったら怒られちゃいそうな、何かのオマケでついてきたおもちゃも飾っちゃうごくごく簡単な、なんちゃって室礼。それでも、あれこれ考えながら設えている時は、私自身の気持ちが落ち着くんですね。
生徒さんも心得たもので、何かお土産をくださる時に「これ、お玄関に飾れるんじゃないかと思って」とおっしゃる方もいて。そんな事を考えながらお土産を選んでくださっていると思うと、本当に嬉しくて。
さて「年中行事の室礼展」
「室礼三千(主宰:山本三千子先生)」主催だったのですが、会場がまた、すばらしかった!
池袋にある「自由学園明日館」重要文化財です。
この建物は、映画監督の羽仁進さんの祖父母、羽仁吉一・もと子夫妻が女学校として創設したもので、世界的建築家フランク・ロイド・ライトによるもの。
館内は撮影禁止だったので外観を。
窓やドアなどは直線を使った幾何学的なデザインで統一されていて、中に入ると、フロアごとに段差をつけた作りになっています。なので、外観は平屋なのですが、中に入ると「あれ?今、私、何階にいるんだっけ?」と錯覚しそう。
館内の室礼、すばらしかったです〜!
お花見、七夕、お正月、お月見、冬至、人生の通過儀礼など、それぞれの室礼コーナーでは解説してくださる方がいて、室礼に込められた思いを感じる事ができました。
が、この日の私の最大の目的は、主催者である山本三千子先生とヘアメイクアーティストの山本浩美さんによるトークイベント。
すばらしいお話しばかりでした。その中で一番心に残っているのが、山本三千子先生が室礼をなぜ学ぼうと思ったのか、というお話し。
それまでは年中行事には全く興味がなかったとおっしゃる先生。そんな中、ご主人がある日突然、飛行機事故で亡くなってしまいました。思いもよらない突然のご主人の死を受け止めきれないで、ただただぼんやりと日々を過ごしていく中で、それまで、何も感じないでいたお彼岸やお盆という風習になぐさめられている自分がいました。そして、亡くなった人はもう二度と戻ってこないのに、季節は必ずまた巡ってくるというすごさに気付いてこの道に入ったそうです。
折々の節目に、生かされていることに感謝し、祈ることは、大きな救いになるのですね。心を救ってくれる偉大な自然(=神)をお迎えするにあたって、お部屋を設えようと考えるのは、古代日本人にとってはごくごく自然だったのですね。文化文明が発達した現代、忘れかけていることのような気がします。
室礼、私は、はじめはなんちゃって室礼で良いと思います。なんちゃってでも何でも、家庭で続ける事が大事だと。室礼の根本的な意味は、人から教わるのではなく肌で感じ取るもの。ならば家庭で続けていくことによって、いつか子供達が肌で感じる瞬間が来ると思います。
さて、身になるお話をたくさん伺ったのだから、立派な室礼になるように頑張らなければ!