2015.08.06
展示期間が8月2日まででしたので、もう終了してしまいました…が、「大彦」小袖コレクションは東京国立博物館所蔵の品々ですので、常設で展示される事もあるようです。
「大彦(だいひこ)」とは。
呉服問屋「大黒屋」に見込まれて婿になった野口彦兵衛が、明治8年に創業した呉服商。独自の友禅染を売る場所として「大彦」を立ち上げたそうです。その後、野口の手がけた着物は「大彦染め」と呼ばれ、高島屋や三井と肩を並べる呉服の名門になったそうです。
ちなみにその後、野口彦兵衛の長男、功造はみずから初代となる「大羊居(たいようきょ)」を立ち上げ、次男である真造が「大彦」のあとを継ぎました。そして真造は、「呉服屋の大彦」を継ぐのではなく、「染色や刺繍技術の大彦」を継ぐのだ、という思いから、「大彦染繍美術研究所」と改称し、衣装を飾るための染色や刺繍なのではなく、染色や刺繍の美しさを衣装という生地の上に表現するのだと考えました。そのためには、利益の追求を第1の目的にしないようにしました。これは、真造の祖父が、真造の父彦兵衛に対して「財産を造ることより、技術を育てて名声を得る」事を望んでいたからです。
あら、話しが逸れてしまいました。
この野口彦兵衛、何がすごかったって、江戸時代の小袖は古着扱い、二束三文で売買されていた当時にあって、彼は、そこに歴史的、芸術的価値を見いだして集めはじめ、それを研究したことでした。その後、関東大震災で、数は減ってしまいましたが、散逸することなく、昭和40年に東京国立博物館所蔵となったそうです。
この野口彦兵衛の小袖コレクションの存在は、二代目の真造の功績にも大きく影響しているでしょうね。
東京国立博物館では、撮影禁止マークのついていない展示品は撮影OK。ということで、撮りまくってきましたよ〜。
一挙公開!!
まずは、艶やかな打掛。江戸時代後期のもの。有職風の幾何模様(この打掛では七宝模様)と四季の花の折枝模様を交互に配した「本辻」
小袖。残雪に桜が咲く嵐山の風景。伊達紋には紅葉。
大きな伊達紋ですね〜。胸元にも伊達紋が入っているのでしょうか?
帷子。麻の夏のきものですね。実は私、この着物が一番印象に残っています。墨絵風にシンプルに竹が描かれていて、周りには水玉が飛んでいます。この水玉、写真では分かりにくいかと思いますが、金糸で刺繍してあるんです。その金糸の水玉が爽やかで。
本当に涼やかな衣装だったんだろうなぁ〜、としばし見とれていました。
小袖。粋な柄の代表格の1つ縞。その縞模様を友禅染で表現し、その上に、同じく友禅染で雪輪や扇面の中に風景を描き、更に梅の木を刺繍で表すという、なんとも粋でゴージャスな小袖。
江戸時代中期の振袖。振袖と書いてありましたが、中振袖くらいでしょうか。大柄で大胆に、衝立てに留る鷹が描かれています。若衆が着用したのでは?との解説がありました。
なるほど〜、森蘭丸がこれを着てたら、織田信長さんはご満悦だったかも!?
重要文化財指定されている、徳川家康が鷺流狂言師に与えたと伝わる小袖。縫い締め絞りによって白と紫に大胆に染め分け、竹の幹には細かい鹿の子絞り。
家紋も絞り染め。
夜着。江戸時代の布団です。なので、中に綿を入れます。寝ている間に心身を守ってもらえるような絵柄を描きます。この夜着には、裕福さを象徴する宝づくしと永遠の若さの象徴である若松が友禅染で描かれています。
こちらも夜着。邪気を払うとされる想像上の霊獣、唐獅子と、不老長寿、富貴の象徴である牡丹が友禅染で描かれています。
産着。刺繍で宝づくしが表されています。男の子の産着でしょうか?
打掛。まっすぐに伸びている一本の竹の周りには松と梅、そして鶴。裾には亀が。
白綸子地に松竹梅鶴亀模様のデザインは武家女性の婚礼衣装の様式ですが、裕福な商家の娘は着用を許されることもあったそうです。
打掛。こちらはぐっと落ち着いたムードの松竹梅模様の打掛。
刺繍の重厚さに圧倒されました。
せっかく来たのだからと、その他の常設展も見てきましたよ。
高円宮様の根付けコレクションのお部屋もありました。根付けの素晴らしさはもちろんですが、お部屋もまた、宮様を彷彿とさせるようで素敵でした。
こちらは室町時代の刀。ピッカピカで、本当に??と思わず叫んでしまいそうになりましたよ。
こちらは刀の鍔(つば)。
こちらは被衣(かづき)。女性が外出時に頭からかぶって顔を隠すためのきもの。なので、衿の付け方が普通のきものと違いますよね。絵が描かれているのは珍しいそうです。被衣は、源義経が五条大橋で弁慶と出会うシーンで有名でしょうか。
東京国立博物館の建物やお庭も、と〜っても素敵でした。
そして、東京国立博物館のミュージアムシアターで、生徒さんがナビゲーターのお仕事をしているので、それも見てきました〜!
ミュージアムシアターは、大型スクリーンに3Dで映し出される映像を、ナビゲーターの解説を聞きながら見てゆくものです。私が行った時は「東博のミイラ デジタル解剖室へようこそ!」というのが上映されていました。しっかり見てきたので、私、ミイラの作り方、知ってます!そして、展示されている本物のミイラを見てきました。
生徒さんは、このお仕事「覚えるのが大変〜!!」と言っていましたが、もちろん覚えるだけではなく、滑舌よく分かりやすく伝えなくちゃいけない訳ですから、私には到底できないわ〜さすが!と思いました。