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帯揚げって、よく忘れちゃう…よね?

2015.03.06

きものを着るには、複雑な手順を踏み、たくさんの小物類を使います。

なぜでしょう。
着物は洋服と違いボタンやファスナーを使わないから、というのが大きな理由でしょう。衣類を体にしっかり巻き付け、はだけたりゆるんだりしないように、紐類でしばっておくのです。複雑な帯結びも、帯締めで押さえておかないとほどけてしまったり、枕を使わないと形よくならなかったりと、皆、洋服のボタン、ファスナーのような実用的な役割を果たしているのです。

ですが、お稽古をしていると、皆さんよく使うのを忘れてしまう物があります。もはや「忘れ物」という言葉の別名と言っても良いくらい(笑) それは…
帯揚げ

 

 

帯揚げを枕にかけるのをよく忘れます。さて、帯揚げって何? と思った方こちらです。この写真の↓帯と着物の間にある黄緑色の細長い布、これは絞りの帯揚げです。もちろん、色や素材は着物とのコーディネイトによって違ってきます。

帯揚げって、よく忘れちゃう…よね?

 

この帯揚げは本当によく皆さん枕にかけ忘れます。なぜなら、帯揚げは数あるきものの紐類の中で、唯一ボタン、ファスナーのような実用的な役割を果たさないから。つまり、帯揚げをかけなくてもきものの着装自体には何ら問題はないのです。

 

ではなぜそんな不要と思えるものをするのでしょう。

実は帯揚げは江戸末期頃までは、実用品だったのです。帯山をきれいに形作る帯枕が使われるようになるまでは、帯揚げが帯枕の役割を果たしていました。時代劇に出てくる女性の帯結びをご覧ください。帯枕を使わず、帯揚げだけで整えているので、帯山がペタンコです。「角出し(つのだし)」という帯結びです。ちなみにこの角出し、帯締めも使っていません。帯枕を使ってお太鼓に結ぶようになると、帯を形作る紐としての帯締めが必要になってきました。

帯揚げって、よく忘れちゃう…よね?

 

つまり、帯枕が使われるようになってからは、帯揚げは紐としての役割をまったく果たさなくなったというわけです。しかし、無くなりはしませんでした。帯揚げは、きものと帯の間をつなぐアクセントとして、今ではアクセサリーに近い感覚で使われています。ですから、帯揚げは美しく結ばなければならないのです。

なくてもいいものをわざわざつけるのですから。