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池田重子コレクション「日本のおしゃれ展」を見に

2016.01.06

崖っぷちを歩ってる

 

落ちたら命がなくなるというギリギリの線が一番魅力的で美しい。そこから外れると野暮になる。この線を見つけるために着物コーディネイトをしている。

 

「日本のおしゃれ展」会場で流れていたDVDで、池田重子さんが語った言葉です。着物に対する深い愛情と気迫を感じ、圧倒されました。

 

池田重子さんは、明治から昭和初期にかけての着物コレクターとして日本一と言われているかた。20年ほど前に第一回「日本のおしゃれ展」を開催し大好評。私も大きな刺激を受けた1人です。以後、何回かシリーズ的に開催されていたのですが、大変残念な事に、昨年の10月にご逝去。図らずも今回の「日本のおしゃれ展」は追悼展となってしまいました。

 

私は第4回までは必ず見に行っていたのですが、それ以後、出産や引っ越し、介護などと重なり、行けませんでした。今回は何も障害がありませんでしたので「行くぞ!!」と元気に張り切っていた矢先に訃報を知って大変残念でしたが、池田重子さん最後の監修である、今回の「日本のおしゃれ展」に行けた事は、本当に嬉しかったです。

 

明治、大正、昭和初期の、現代にはない自由な発想で生み出された美しいきもの達。池田重子さんはいつも、それらに物語性を持たせたコーディネイトに作り上げ、特に帯留めに深い意味を持たせているように感じていました。今回流れていたDVDの中でも「帯留めは、きものの一番最後に身につけるもの。だから帯留めは画竜点睛なの」とおっしゃっていました。帯留めを身につける事で初めて本物の着物姿が完成する。どんな帯留めを持ってくるかで完成度が全然違ってくるのでしょう。

 

池田重子さんのコレクター人生は、偶然に出会った1つの帯留めから始まったそうです。深窓の令嬢として本物だけを見て育った幼少期を持つ池田重子さんにとっては、必然の出会いだったのでしょうね。

 

今回の「日本のおしゃれ展」では、長年かけて収集した帯留めも多数展示されています。小さな細工物ですが、細工に込められた意味合いや、美しさ、精巧さは、やはり大きな存在感があります。この小さくて大きな帯留めを、活かすも殺すもコーディネイト次第。ギリギリの線の崖っぷちまで、あと半歩なのか、それとも1歩行けるのか?

 

着物や帯は、洋服とは違い無地の物は少なく、大抵は絵柄がつけられています。本展では、半衿も、色や柄、刺繍がほどこされたものを使用していて、物語のひとつの鍵になっています。それらの柄物同士を、ガチャガチャ感がなく重ね合わせていくセンスは、まさにギリギリの線探しのよう。あるいは、引いて引いて、限界まで削ぎ落とした結果に生まれたのであろうコーディネイトも。きもの類のなかで唯一、無地である帯揚げを大変効果的に使っていたり。

 

贅沢なきものでなくても、おしゃれにきものを着れば良い。立派にならなくても幸せになれば良い。

 

確かに!贅沢なきものでなくても、工夫しておしゃれに装えば幸せな気持ちになりますね。この言葉からも、きものへの深い愛情を感じます。

池田重子コレクション「日本のおしゃれ展」を見に

 

 

 

追悼 池田重子コレクション「日本のおしゃれ展」

会場:松屋銀座8階イベントスクエア
期間:2015年12月30日(水)〜2016年1月18日(月) ※1月1日は休業
時間:10:00〜20:00
※12月31日(木) 10:00〜18:00、1月2日(土) 9:30〜19:30
※入場は閉場の30分前まで。最終日は17:00まで。
入場料:一般 1,000円、高大生 700円、中学生 500円、小学生 300円